どのマンションもいつかは住めなくなる日が訪れる。人間と同じマンションにも寿命というのがある。
私の住んでいる街に老朽化が進みスラム化した築44年のマンションがある。そのマンションは街中の一等地に建っているマンションなのだが、住戸の窓ガラスは割れたまま、廊下の照明も消えたままだ。見る限り人の住めるマンションではない。
建替えが進まない、これが分譲マンションの実情である。人が住めないマンションはスラム化が進む。スラム化が進むと治安の悪化を招き、危険な建物と化す。
現在、住宅供給過多の時代と言われているが、今後国内の人口減少に伴い、更に空き家が増加する。
将来、このスラム化、空き家増加というのは社会問題へと発展するであろう。
マンション建替えについては、既に国も法整備など問題解決に向けて動いているのだが、今後急速に建替えが進むとは考えにくい。
国土交通省が行ったマンション建替えの実施状況の調査データがある。
この調査データは、平成28年4月1日時点のものであるが、建替えが実施されたマンションは全国で227件、実施中を含めると244件と僅かな件数だ。
建替えの実施時期は、築後30年から40年が最も多い。これはマンションの実質寿命と読み替えることもできる。
現在、日本国内に存在する築後30年超のマンションの数は、国土交通省が作成した資料(下図)で把握できる。
2013年時点で築後30年超のマンションは129万戸、既に建替えが実施されているのが244件、これを比較することで実施状況の割合が把握できる。
単位が戸数、件数と異なるから、戸数を件数に換算してみる。
仮に1件当り100戸として計算すると12,900件となり、実施率は1.8%ということになる。実際とは異なるだろうが仮に2倍にしたところで4%に満たない。
この実施率の低さから建替えが進んでいないことが窺える。
ここ十数年、建替えの実施は横ばい状態が続いている。国内における人口減少、空き家の増加、住宅需要が減少する社会事情を鑑みれば今後急速に建替えが進むとは考えにくい。
それを見越してか現在、リノベーション事業、リニューアル事業が活性化している。いずれも既築の建物を再生する事業となるのだが、建替えが困難と言われるマンションにとって、これを上手に活用し、長寿命化を図ることが今後一層求められるであろう。
将来を見据えたマンションの在り方について、管理組合そして個々の所有者はもっと真剣に考える必要があるだろう。