管理組合によっては、理事会の諮問機関としてそれぞれの目的や課題に応じた「専門委員会」を設置することがあります。
大規模修繕を機に「修繕委員会」を立ち上げたり、駐車場の空き対策にあたり「駐車場空き対策委員会」、管理規約の見直しにあたり「規約改正委員会」、長期修繕計画の見直しにあたり「長期修繕計画検討委員会」、管理会社の変更にあたり「管理会社変更検討委員会」など、専門委員会にも色んな種類があります。
専門委員会のメンバーは、輪番制による管理組合の役員選任とは異なり、有志により参加者を募る方法とか適任者を推薦するといった方法が一般的に用いられています。
専門委員会に専門知識のある方、熱意のある方が集まることで、理事会や管理組合にとって有意義な組織になり得ます。
ただし、専門委員会には決定権はありませんから、あくまで理事会の諮問機関として、決められた課題を検討する役割を担います。なので、決定権はないという点に注意が必要です。
専門委員会の設置については、国土交通省が作成している「マンション標準管理規約」「同コメント」にこのような記述があります。
第55条(専門委員会の設置)
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。
第55条に関するコメント
➀専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
➁専門委員会は、検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。必要に応じ検討対象に関する専門的知識を有する者(組合員以外も含む。)の参加を求めることもできる。
現行管理規約にこの「専門委員会の設置」の規定が無い場合は、専門委員会を設置する前に規約改正を行うことをお薦めします。
管理組合によっては、委員会のメンバーの資格、委員会の業務内容、委員会の権限などを記した細則を設けることが考えられますが、運営上のトラブルを回避するために明確なルールを設けることが望まれます。
例えば修繕委員会の場合
▶修繕委員会のメンバー資格
・大規模修繕に関心のある人
・建築や専門知識を持つ人
・理事長経験者など
▶修繕委員会の業務
・コンサルタントや工事業者の選定
・工事説明会などの実施
・予備調査による居住者からの意見聴収
・工事中の各種打合せ
・検査への立会
▶修繕委員会の権限・義務
・委員会は理事会の諮問機関であるため決定権は理事会にある
・進捗状況や検討内容について適宜理事会に報告する
修繕委員会の設置においては、理事会との連携は必須であり、理事会の意向と離れて独歩しないように理事会との意思の疎通が不可欠となります。なので、修繕委員会の会合には理事のメンバーが参加することが望まれます。
コンサルタントと工事業者の選定までは修繕委員会の役割とし、そこで選定されたコンサルタントと工事業者は、理事会決議を経て最終的には総会で決定します。
前述の修繕委員会が行う業者の選定とは、例えば公募などにより応募のあった6社を3社に絞り込み、更にプレゼンテーションを経て1社に絞り込む作業のことを指します。プレゼンテーションは公開形式(組合員参加)で行われるのが通例です。
専門委員会の設置は理事会決議?
前述のマンション標準管理規約第55条第1項に「理事会は、その責任と範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。」旨の記載があり、専門委員会は、決定権を持たない理事会の下部組織としての位置付けになりますので、そこだけで解釈すれば理事会決議で可能と考えられます。
しかしながら、専門委員会のメンバーを集めたり、専門委員会の必要性とかその後の円滑な活動を考察すれば、事前に所有者の皆さんの了解を得ることが望まれます。
実情として、専門委員会の運営細則を制定したり、管理組合から委員会のメンバーに報酬を支給する場合は、前述のコメントにあるように総会の決議が必要になります。
専門委員会の設置にあたっては、参加者を募ったり、設置意義を理解させるためにも、理事会で勝手に決めるのではなく、総会での話し合いは必要かと思います。(これはあくまで個人的な意見です。)
専門委員会は理事会の下部組織!
専門委員会は前述のとおり理事会の諮問機関であり、理事会の下部組織に位置付けられます。
各々の役割について具体例を挙げると、専門委員会で検討した内容(素案)を理事会へ具申する。次にこの素案を理事会で検討し、最終的な案を理事会が取りまとめる。そしてその案を総会に上程する。
私の管理会社時代に色んな専門委員会に参加させてもらいましたが、理事会が専門委員会に任せっきりといったケースが多かったです。結果、修繕委員会で決まった内容がそのまま総会に上程され、理事会は蚊帳の外といった感じです。
専門委員会のメンバーの皆さんが大切な時間を費やして真剣にマンションのために話し合っているのに一方の理事会は無関心で蚊帳の外、そんなマンションも中には存在します。
理事会がその他の業務に無理なく対応していくために専門委員会が設置されるわけですから、連携と役割分担というのは欠かせません。
そう考えると、委員会の運営細則は、互いの位置付けを知る上で設けることが望まれます。